越えられない国境ーバスを逃して途方にくれるー

越えられない国境ーバスを逃して途方にくれるー

ダイヤを素直に信じた僕が悪かった

アルバニア北部の街・シュコダル。十分に旅をし終えた私は次の街に向かおうとしていました。目指すは北方。モンテネグロの港町コトール。入り組んだ港に、陸側はすぐ山になっており、山間に家が立ち並ぶ。いかにもヨーロッパと言えるかもしれない、本当に美しい街・・・だと聞いています。

私がアルバニアを訪れた2017年2月では、そのコトールに向かうバスは10時発。9時50分にはバス停のあるモスク前に着いたのでした。ミニバス、とだけ聞いていたのでそれを探し回ったところない。ないのです。

次第にうろうろ、おろおろする僕の周りに人だかりができてくる。いや、わかるんです。だってアジア人が大きな荷物(リュックひとつだけど)持って、右往左往していたら目立つ目立つ。アジア人は僕一人なのですから。

みんな口々に声をかけて来る。おんなじ言葉。

“Taxi?”

僕、この言葉めちゃくちゃ嫌いで、ブログの中には「本当におもてなしの好きな良い人に出会えた」話などあるのですが、ブルガリアでボッタクられてからタクシー恐怖症。日本でもほとんど乗りません。

ただ、身動きがとれないほどに人が集まってしまい、見世物状態。ならばここでワンスピーチしてやろうと。取り囲む全員の目を見てから「こんにちは」と挨拶。みんなニヤニヤしている。

「僕は困ったことがある、でもここにいるみんなは賢い人に見えるからそれはわかっているだろう」

みんな深くうなづく。楽しくなって来た。

「私はアジアから来た。これもみんな知っているだろう。僕の顔はどう見てもイギリス人やドイツ人ではない」

みんな笑いながらうなづく。

「何に困っているか、わかるだろうか?」

そう問いかけると、

「ウルツィニ?」「ティラナ?」「コトール?」「エルバサン?」

どんどんと地名が出て来る。

「そう、コトール。数分後にここからミニバスが出るはずなのだ。誰か知っている人は?」

口々に何かを言っている。全員言っていることが違う。

一人が重々しく、目を見てゆっくりとした英語で話して来た。

「残念だ。そのバスはもう行ってしまった。あなたはこの町でもう一泊するか、私たちの提案するオプションを選ぶほかない」

「まずはそのオプションの話を聞きましょう。私も今代案を考えているところだ」

ならば、とそのおじさん。

「君はコトールに行きたいわけだ。私はタクシーを出すことができる。ただしウルツィニまで。そこから君はタクシーをまた掴めて乗れば良い。モンテネグロ語はわかるか?」

「ウルツィニとコトールは随分と距離がある。バスは1日数便しかない。所要時間も多くかかるだろう。モンテネグロ語は本当に日常会話程度なら推測できる。あなたはそれをいくらで提案するのか?」

「60」

「レク?」

「ユーロ」

「バスは5ユーロだった」

「私は個人の事業主だから仕方がない、これも人助けだろう。ところで君のプランは?」

「コトールは諦めてティラナに帰る、ということだ。そのバスを探している。それと、それまでに時間を潰せるおいしいレストランを」

ここで「なーんだ」と数人が去って行く。

目を見て話した運転手は満面の笑みを浮かべた。

「ティラナ行きのバスはあそこ(ラウンドアバウト)から出る。3時間に1本程度出ている。ここでは魚を食べなさい。魚。うまいぞ?」

そう言うと2つのレストランが提案された。

「良い旅を」

ダイヤを素直に信じた僕が悪かった
私が行った2017年2月では、コトール行きのバスは10時発。9時50分にはバス停のあるモスク前に着いた記憶があります。ミニバス、とだけ聞いていたのでそれを探し回ったところない。ない。ない。

次第にうろうろ、おろおろする僕の周りに人だかりができてくる。いや、わかるんです。だってアジア人が大きな荷物(リュックひとつだけど)持って、右往左往していたら目立つ目立つ。アジア人は僕一人なのですから。

みんな口々に声をかけて来る。おんなじ言葉。

“Taxi?”

僕、この言葉めちゃくちゃ嫌いで、ブログの中には「本当におもてなしの好きな良い人に出会えた」話などあるのですが、ブルガリアでボッタクられてからタクシー恐怖症。日本でもほとんど乗りません。

ただ、身動きがとれないほどに人が集まってしまい、見世物状態。ならばここでワンスピーチしてやろうと。取り囲む全員の目を見てから「こんにちは」と挨拶。みんなニヤニヤしている。

「僕は困ったことがある、でもここにいるみんなは賢い人に見えるからそれはわかっているだろう」

みんな深くうなづく。楽しくなって来た。

「私はアジアから来た。これもみんな知っているだろう。僕の顔はどう見てもイギリス人やドイツ人ではない」

みんな笑いながらうなづく。

「何に困っているか、わかるだろうか?」

そう問いかけると、

「ウルツィニ?」「ティラナ?」「コトール?」「エルバサン?」

どんどんと地名が出て来る。

「そう、コトール。数分後にここからミニバスが出るはずなのだ。誰か知っている人は?」

口々に何かを言っている。全員言っていることが違う。

一人が重々しく、目を見てゆっくりとした英語で話して来た。

「残念だ。そのバスはもう行ってしまった。あなたはこの町でもう一泊するか、私たちの提案するオプションを選ぶほかない」

「まずはそのオプションの話を聞きましょう。私も今代案を考えているところだ」

ならば、とそのおじさん。

「君はコトールに行きたいわけだ。私はタクシーを出すことができる。ただしウルツィニまで。そこから君はタクシーをまた掴めて乗れば良い。モンテネグロ語はわかるか?」

「ウルツィニとコトールは随分と距離がある。バスは1日数便しかない。所要時間も多くかかるだろう。モンテネグロ語は本当に日常会話程度なら推測できる。あなたはそれをいくらで提案するのか?」

「60」

「レク?」

「ユーロ」

「バスは5ユーロだった」

「私は個人の事業主だから仕方がない、これも人助けだろう。ところで君のプランは?」

「コトールは諦めてティラナに帰る、ということだ。そのバスを探している。それと、それまでに時間を潰せるおいしいレストランを」

ここで「なーんだ」と数人が去って行く。

目を見て話した運転手は満面の笑みを浮かべた。

「ティラナ行きのバスはあそこ(ラウンドアバウト)から出る。3時間に1本程度出ている。ここでは魚を食べなさい。魚。うまいぞ?」

そう言うと2つのレストランが提案された。

「良い旅を」

おじさんはそう言いながらどっかへ去って行った。

ティラナで知り合った女子学生が僕に言ったことを思い出した。この国は「優しさ」の国なのだと。日本も「おもてなし」の国だろう。私たちもそうなのだと。

旅をしていると、ぼったくりやらスリやら、どうやら悪いことを先に想像してしまうことがある。でも、そればかりだと失うものもある。僕はコトールに行く機会こそ失ったが、その時なぜか人と話せた喜びと、屈託のない笑顔を見ることができた。そして、本当に美味しい魚料理を、陽気なおじさんのお店で堪能した。旅の失敗は避けたいが、それもまた一興。賛同してくれる人はいるだろうか・・・? とはいえ、この国のバスは「ダイヤの5〜10分前に出発してしまう」こればかりはちょっと理解できない。遅いならわかるんだけど・・・さ。

はそう言いながらどっかへ去って行った。

ティラナで知り合った女子学生が僕に言ったことを思い出した。この国は「優しさ」の国なのだと。日本も「おもてなし」の国だろう。私たちもそうなのだと。

旅をしていると、ぼったくりやらスリやら、どうやら悪いことを先に想像してしまうことがある。でも、そればかりだと失うものもある。僕はコトールに行く機会こそ失ったが、その時なぜか人と話せた喜びと、屈託のない笑顔を見ることができた。そして、本当に美味しい魚料理を、陽気なおじさんのお店で堪能した。旅の失敗は避けたいが、それもまた一興。賛同してくれる人はいるだろうか・・・?

とはいえ、この国のバスは「ダイヤの5〜10分前に出発してしまう」こればかりはちょっと理解できない。遅いならわかるんだけど・・・さ。

そんな話。