コソボ訪問記4:空港

コソボ訪問記4:空港

ここまでのお話



 

赤土の大地を超えて、飛行機は滑走路に着陸する。ほとんど振動のない滑走路。パイロットの腕もそうだが、よく整備された空港なのだろう。誰も拍手することなく、着陸した瞬間からもくもくと真剣に頭上の荷物をみなが取り出しはじめた。

プリシュティナの空港内も、意外と新しく綺麗な空港だ。トイレに駆け込んでもそうだ。
ただ、人がいない。到着した便とごくわずかな職員を除いて。電気もついておらず、物音がほとんどしない。あまり便がないことは把握しているが、日本の地方空港のそれよりも稼働率の低いここは、昨年(2017年)できたばかりなのだという。

入国審査のブースもスムース。列もほとんどできず、コソボの紋章を胸につけた入国管理官は楽しそうに働いている。さまざまな言語を操っているようだ。”Tourist aus Japan?”僕の入国管理官はドイツ語と英語交じりにそう尋ねた。50代と見える笑顔のメガネをかけたおじさん。”Willkommen, welcome to Kosovo!”と言いながらスタンプを押す。おしゃべりをしている人もいる。明るく、緊張感はほとんどない。いいことだ。

ところが税関は不思議な空間であった。皆当然のように “Nothing to declare”。緑の方向へ進むが、無作為に人を選びカバンを開けさせている。本当に無作為のようで、職員の近くを通った人だけがそんな感じのようだ。私もまた「アジア的外見」を理由にひっかかり、手荷物検査を受けることになった。恥ずかしながら、カメラのバッテリーが引っかかり、全てのリュックの荷物を出すように命じられる。ああ、とてもめんどくさい。全ての荷物をピックしたあとなのだ。絶対にバッテリーはひっかかるに決まっている、と。

それにちょっと恥ずかしさもある。実は、カバンの中に隠していた狐のぬいぐるみを隠していたのだ。ある種お守りで「たまに」旅に連れて行く。理由はない。30を手前にした男がぬいぐるみを持ち歩いているのだ。でもひょっこり登場し笑顔を誘った。”Is this yours?”ニヤニヤしながら職員が尋ねる。余計なお世話だ。

全ての荷物のチェックが終わると税関職員は僕に告げた。”Have a good trip in our land.”。私たちの土地、そうだ。30年前はそうではなかったのだ。ともかく、扉は開いた。コソボの旅が始まるのだ。